2008年7月2日水曜日

二つ星レストランのおもてなし

先日ミシュランで二つ星に分類されるフランス料理店に行ってきた。私の舌はさほど上等ではないので食べ物の味はおいしい・ふつう・おいしくないの3段階くらいにしか分けられないが、とりあえず二つ星レストランである。注文したのは魚中心のコースだ。

食事が終盤にさしかかったころ、オーナーシェフがテーブルに挨拶に来た。前日に予約したばかりの一見の客に対してもこうして相手するってのはレストラン経営も楽じゃないねェ、なんて思いながら握手をしてもらう。その後本人に調理場なんかを直々に案内してもらって愉快な夜だった。

が、「調理場に入れてもらいました。つまみ食いもしました。さすが二つ星のサービスは違います。終わり」というまとめ方をするつもりはない。これは私がたまたまラッキーだっただけだ。サービスといえば、給仕も5人くらいが入れ替わり立ち替わりやってきたが、これも高級レストランだと普通のこと。

ただ一つだけ、さすがだな、と思ったことがあるので書いておきたい。それは「水」のことである。

私は食事中にアルコールを飲まない。ワインの代わりに飲むのはミネラルウォーター、特に炭酸水である。よくある問題として、1本を飲み干した後2本目を頼むには多いな、どうしようかな、というものがある。

レストランの応対として一般にありがちなのは

「2本目のボトルをあけましょうか」

それか

「水道水にしますか」

というものだ。水道水でいいか、とも思うのだが、ケチと思われるのも癪なのでいつも2本目のボトルを注文することになる。そして2本目は半分も飲めずにお会計ということになる。半分飲めなかったからといって、会計は当然2本分である。

ところが、このレストランはちょっと違った。係の人が1本目のボトルを全部注ぎ終わったのはメインを食べ終える直前。デザートのときにコーヒーも飲むし、でも水も飲むし(猫舌なんです)、もう1本ボトルを注文しようかなあ、と思いつつ残った水をちびちび飲んでいたら、もうないはずの炭酸水が無言でグラスに注がれた。

二つ星レストランは客の意向を聞かずに勝手にボトルを開けるのか、とやや憤慨した。いやそれとも、もしかすると、と思ったら案の定。会計のときに私の予想が当たっていたことがわかった。

その追加の炭酸水は会計に含まれていなかったのである。

客がグラス一杯だけの水を欲している。しかし水はボトル単位でしか売らないという理由で一杯の水にボトル一本分の値段を付けるのが普通のレストラン。一杯の水くらいサービスしようというのがこのレストラン。

小さなことながらお客は確実に満足する。素晴らしいおもてなし。恐れ入りました。

12月30日追記

10月に、このレストラン(ダニエル)がミシュランで三つ星になった。

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