ニューヨークには外国人差別がない、と言い切ったら過言というものだが、病院や図書館など公共の場所で国籍を問題にされることはない。ここアメリカで外国人として生きていくには居心地の良い都市である。居心地が良すぎて自分が外国人であることを忘れそうになるが、足元をすくわれることもある。
それは中東と西アジアに行く準備をしたときのことだった。
中東A国の場合
石油資本のおかげで建設ラッシュのA国。観光にも力を入れていて、日本人は入国の際にビザがいらない。ネットを見ても日本人の観光旅行記がたくさんみつかる。しかしガイドブックには「ビザの件は流動的なので大使館に確認すること」とも書いてある。
そういうわけで、念のためにA国の出先機関に問い合わせてみた。ところが「日本人だからビザはいらないですよね?」というだけの要件のはずが長電話になってしまった。
A国の係員「アメリカに住んでますか?」
日本のパスポートを持ち米国ビザでアメリカに滞在しています、と説明。滞在年数を聞かれた後、
A国「あなたは日本のパスポートを持っていても状況が若干特殊なのでビザを取ったほうがいいでしょう」
ではすみませんがビザの手続方法を教えてもらえますか。
A国「いえ、ここでは日本人用のビザは出せません」
なんと。
A国「現地の空港に到着したときに到着ビザを取ってください。A国人の書いた招聘状が必要になりますから滞在先のホテルにあらかじめ書いてもらって、それを入国係官に提出してください」
……。
結局面倒になり、A国に行くのはやめてしまった。
西アジアB国の場合
西アジアのB国。発展を続けてはいるものの、他の西アジアの国と同じく観光の目的地としては一般的でない。日本人がB国に入国するにはビザが必要である。ビザの有効期間は数か月から10年まであるが、今回は5年のビザを申し込んでみた。
ビザを申し込みしてから数日、ビザの手配を頼んだ旅行社から電話がかかってきた。
旅行社「5年のビザは無理ですねー」
特に制限はなかったはずだが、と思っていると
旅行社「あなたの場合アメリカに住んでいる日本人なので、通常のアメリカ人や日本人に比べて制限が厳しくなります」
ううむ、ここでもか。
旅行社「1年ビザなら出ますので、また必要になったらビザを取り直してください」
注釈
蛇足ながら真面目な話を書いておくと、上記の話は理由のないことではない。
A国のように、ビザ申請者(私)が国籍のない国(アメリカ)でビザを取得できないのは特別なことではない。在アメリカA国領事の仕事はアメリカ人の入国資格を審査してビザを発給することであり、日本人は審査不可能と言われても仕方がないのだ。日本にあるA国大使館に行ってください、と言われないだけまだましというものである。B国も同様で、期間が短縮されたもののビザを発給してくれたのには感謝するべきだと思う。
それにしても、自分が外国人であることを認識したのはひさしぶりだった。
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