2009年5月18日月曜日

ニューヨークの大統領機低空飛行の件

4月下旬の時事通信の記事より。日本でもニュースになったから覚えている方がいるかもしれない。

大統領機低空旋回で避難騒ぎ=自由の女神背景に撮影-NY

 【ニューヨーク27日時事】オバマ米大統領の専用機が27日、戦闘機を伴ってニューヨーク市上空を低空旋回し、旅客機が高層ビルに突っ込んだ2001年の同時テロを想起した数百人が避難する騒ぎになった。実は軍による写真撮影の一環で、ホワイトハウスは謝罪を表明。

ちなみにウォールストリートジャーナルの記事では数千人が避難したことになっている。こちらが正しい数字だと思う。

それはともかく。これはひどかった。2001年の同時多発テロのときにニューヨークにいなかった私も鳥肌が立ち体が震えた。

◇ ◇ ◇ 

月曜日の朝10時。最高気温が30度を超えるという予報のあった快晴の日だ。飛行機の飛ぶ音が随分大きく聞こえるので空を見た。旅客機サイズのボーイング747型機が低空飛行をしていた。

ニューヨークでは常に飛行機が上空を飛んでいるが、これほど機体が大きく見えるのは普通ではない。さらに飛行機は同じところを小さい半径で旋回している。あたかも突撃するビルに狙いを定めているかのように。

飛行機の轟音は大きくなり、道を歩いていた人も立ち止まり飛行機を見上げた。その場にいる全員があの日、9月11日のことを思った。

「戦闘機もいる」

だれかが叫んだ。ボーイングより機体が小さいので目立たなかったが、F-16戦闘機がボーイングのあとにぴったり着いて一緒に飛んでいる。

「ボーイングを撃ち落とすんじゃないか?」
「嘘だろ」

のような会話が聞かれる。

「逃げろ」

誰かが言った。

◇ ◇ ◇

飛行機が落ちてくるかもしれない状況でどこに避難するかは難しい問題だ。とりあえず大きなビルの近くは避けたほうがよさそうだ。もっとも建物の中からは人が外に退避してきているので近寄れない。しかし、とりあえず建物が少ない場所に移って善後策を考えている間に「この飛行は実は撮影のためのものでした。安全です」という発表がなされた。

ほんの30分程度のことだったが、避難したほかの人たちと同様、私も死ぬ可能性を少し考えた。人生まだやり残したことがたくさんあるのに、とも思った。

私は9月11日のテロをテレビでしか見たことがない。それでも恐怖と緊張は言葉で表せないほどだった。テロを知るニューヨーカーがこの撮影に対し怒りを表明していた気持ちはよくわかる。

◇ ◇ ◇

スラッシュドット・ジャパンに当を得た書き込みがあった。

「○○省が事前の徹底通知をおろそかにしたまま、東京メトロの大きな駅にて、科学防護服を着けた集団を使って写真撮影をおこなう」に等しいことなのかもしれない。(laggnuggさん)

すばらしい比喩だと思う。

◇ ◇ ◇

事件の直後に詳細な体験を書けばよかったのだろうが、とてもその瞬間を振り返る気持ちにならなかった。というわけで3週間たった今、これを書いてみる。

動画リンク

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